講演との出会い(ソフトバンク 孫正義)

今週の木曜日にSofubank World2015に参加。ソフトバンクの孫正義会長の話をお聞きすることができました。

実は孫さんのお話は、ちょうど20年間前にお話をお聞きしたことがあります。その時は起業にいたる経緯やその思い、そして人生におけるビジョン・設計などをお話しておりましたが、会社の規模も事業内容も全然かわっているせいもあり、当時よりもスケールの大きさが感じられました。

今回の講演の中でのキーワードは情報革命の中で、いかに人々の暮しを変えていくのか。ソフトバンクの考える未来像がよくわかりました。ポイントは2つ。1つは企業において。情報武装×成長戦略が企業成長の重要な鍵になってくるとのこと。スマホやタブレット、クラウドサービスなどの情報リテラシーは武士でいう刀に近いものであり、今後ますます常識になる。その情報武装をせずに、戦で戦うことはできない。

もう1つがソフトバンクが今後注力していく3つの分野についてです。3つの分野とは、IOT・AI・ロボットとのこと。IOTとは、Internet of Thingsの略で従来は主にパソコンやサーバー、プリンタ等のIT関連機器が接続されていたインターネットにそれ以外の様々な"モノ"を接続する技術です。現在一人あたりのデバイスがスマホとタブレットのように2デバイスが30年後には1000デバイスまで増え、ヒトとモノ・モノとモノがつながることで爆発的にライフスタイルが変わるという話をされておりました。家電や腕時計、現在別々に機能しているものがITを通じて1つにつながり、そのデータがクラウドによって蓄積されて、それぞれの生活において、その人にあった機能を自動的に発揮してくれるようになります。

AIの分野は2018年にコンピューターの能力が飛躍的に高まり、人間の脳を超える時代が来るとの予測を発表されておりました。人間の脳細胞は2000年の間に大きく変化はしていないが、コンピューターのトランジスタは1年半で倍になり、人間のひとつの脳細胞の数が300億個だとして、AIはその10000倍、1万倍、1兆倍の規模になっていく とのこと。シンギュラリティ、人間の能力をコンピュータが超えていく、そういう日が来るのか来ないのか。避けて通りたいけど、間違いなく避けて通れない。そうなると人々の役割や機能も変わり、人間が得意とすることに集中できるとのこと。今回ソフトバンクはIBMと提携してそこ分野にも注力していくとのこと。

最後のロボット分野では、ペッパーに代表されるように感情をもったロボットがあらわれ、周囲とのかかわりの中で感情がかわり、自らの意志で関わりあいながら、Deep Learningによって自己学習をしていく。孫さんとペッパーが、その場で接客の場面におけるやりとりを通じて、Deep Learningとは何かを披露してくださいました。

個人的には、これからのコンピューターなどの技術の発展で人々のライフスタイルなどが大きく変わり、それによってとても便利になる部分もあるし、ロボットが活躍してくれることで人手不足に悩まされる職種・業界、さらには単純作業はロボットに置き換われてしまう可能性があることを実感しました。

反面で、あらゆるものがつながり、ビッグデータとして蓄積されていくことで、何かに自分の生活、人生が監視されているように思えてしまう面もあると思います。また便利になりすぎるゆえに、人間の脳をはじめとする能力自体が退化し、何も考えなくなるように思います。人間は不便なことがあるから、何かを考え、それに対処するために前もって行動していることが、自動的にやってくれたり、自分でも考えずにコンピューターが提案・選択してくれる時代が本当にいいのか。さらにロボットも感情を持ち、自分で考え、学習するというのは大変ありがたいことではあるが、そのロボットが暴走をしたり、映画ではないが、やがて人間に牙をむくような時代が未来にあるのかもしれないというイメージも現実を帯びてきたように思いました。

人々の生活が、IT技術やロボットによって、豊かになり、また便利になるといういい面もたくさんありつつ、一方でそれによって失うものもあることを私たちは認識しなければならないとも思いました。そうしたことをふまえて、何が人類にとって必要なことなのか、技術発展だけでなく、そこに置き去りにされた『ヒト』を中心にあらためて考えなければならない岐路がそろそろ近くになってきているように思います。